結納の起源ははるか昔、1400年前の仁徳天皇時代にさかのぼり、仁徳天皇の皇太子が結婚を決めた際に相手の女性へ納采が送られたのが始まりとされています。その後公家や武家の間でこのしきたりが広まり、結納としてシステムがはっきりと確立されたのは室町時代です。
長い間公家・武家のみの間で行われてきましたが、明治に入ると一般庶民の間でも結納を行うようになりました。現在は簡素化が進み、結納と言っても伝統的な正式結納から略式結納、そして結納というよりもお互いの両親の顔合わせを兼ねた食事会という、さらに気軽なスタイルもあります。
どれも基本は大体同じなのですが、それでも各々特徴や違いがあります。それでは、正式結納・仲人がいる略式結納・仲人がいない略式結納・顔合わせの食事会の4つのスタイル別の流れと、その他の注意点を紹介します。
正式結納の流れとは
結納をしない、もしくは結納を簡単に済ますのが主流になりつつあると言えども、昔からの伝統がある地域、特に関西から九州にかけての地域は、昔ながらの豪華な結納を執り行う事が少なくありません。
正式結納を行うには、仲人の存在が重要です。男女が知り合うきっかけから結納・結婚・披露宴を全て取り仕切る仲人ももちろんですが、現在は結納日や挙式当日のみの仲人というのも多くなりました。
場所(正式結納)
場所は男性宅と女性宅です。仲人が両家の間を行き来して、お互いの結納品や受書を預かったり手渡したりします。
結納の流れ(正式結納)
まず仲人は男性宅へ伺い、結納品の品々を受け取ります。そのまま女性宅へ向かい、口上を述べて男性宅から預かった結納品を渡します。女性側は、確かに受け取ったという受書を仲人へ渡します。
その後女性側からの結納品がある場合は、仲人はそれらを受け取り、再度男性宅を訪問します。口上を述べた後女性側からの結納品を渡し、受け取った男性側は受書を仲人へ渡します。
その後男性側は祝い膳で仲人をもてなし、仲人はその後再び女性宅を訪れて、男性側から受け取った受書を渡します。女性側は酒肴で仲人をねぎらえば、結納が執り行われた事になります。
仲人へのお礼(正式結納)
仲人が両家を行き来する際に交通機関を利用した場合、「お車代」として交通費に手間賃を加えた金額を渡します。男性宅と女性宅を行き来するので、両家からお車代を渡すのが結納のマナーの一つです。また、御礼や酒肴代として仲人への謝礼があります。その金額は地域によってまちまちですが、結納金の1割から2割程度が目安と言われています。
その他の注意点(正式結納)
関東から東北・北海道の地域で正式結納が行われる際には、上に述べたように男性側と女性側からそれぞれ結納品が贈られます。しかし関西から九州地域では、女性側からの結納品は必要ありません。ですから、その際の仲人は女性側からの受書を受け取り、男性側に渡せば結納が出来た事になります。
仲人がいる略式結納の流れ
正式結納のように仲人が両家を行き来するのではなく、両家が一度に結納品を持って集まり、その場で結納品を交換するのを略式結納といいます。正式結納は結納品渡しと受書渡しの2回に渡って両家が仲人をもてなし、仲人は両家を2往復する事になります。しかし略式結納では集まるのは一度だけで、そこで両家と共に祝い膳を囲むのみなので、仲人・両家にとっても負担が減るため、略式結納を行う人も多くなっています。
場所(仲人がいる略式結納)
両家どちらかの自宅または、ホテル・レストラン・料亭などで行われます。両家どちらかの自宅で行う場合は、なるべく床の間がある家が良いでしょう。なぜならば両家の結納品を交換した際に、それらを床の間に置くからです。
自宅で行うが両家とも床の間が無いという場合は、部屋の上座に位置する場所に台やテーブルを置いて、床よりも高くした場所に結納品を置きます。
結納の流れ(仲人がいる略式結納)
結納の進行は仲人が行います。結納会場に一同が着席すると、まずは仲人が口上を述べます。その後男性が挨拶してから、結納品を仲人へ差し出します。仲人はそれらを受け取って女性に渡します。女性が目録に目を通したら、そのあとは父親・母親と順に続きます。
女性が受書を仲人へ手渡したら、今度は仲人婦人が男性へと渡します。男性と両親が受書に目を通すと、次は女性側の結納品を男性側へ差し出し、その後は男性側が目録を確認してから受書を女性側に渡します。仲人が祝いの口上を述べて結納はお開きです。その後両家と仲人夫妻が、一緒に祝い膳を囲みます。
仲人へのお礼(仲人がいる略式結納)
お車代を渡します。祝い膳を囲まなかった場合は、別に酒肴代を用意します。謝礼は正式結納と同じく結納金の1割から2割が目安ですが、正式結納よりも簡略して行われるため1割でも良い、とする場合があります。謝礼は当日には渡さずに、結納後の吉日または媒酌人を頼んでいる場合は挙式当日に渡すようにします。
仲人がいない略式結納の流れ
仲人がいない、両家のみの略式結納もあります。結納というスタイルの中ではもっとも気軽で、結納をする両家はこのスタイルで行うのがもっとも多いと言われています。
仲人役は?(仲人がいない略式結納)
結納の進行役として、仲人は重大な役割を果たします。しかしその仲人がいないので、進行役を前もって決めておく必要があります。一般的には男性の父親がその進行役をしますが、本人達が進行する場合もあります。
場所(仲人がいない略式結納)
場所は仲人がいる略式結納と基本的には同じですが、両家のみという気軽さなので自宅で行う人が多いです。しかし、述べる口上を作るのが大変だったり、結納の手順を覚えるのが忙しくて難しい、などという場合には、ホテルや結婚式場にある結納プランを利用するのも一つの手です。そのプランでは、仲人の代わりの進行役や口上マニュアルが利用でき、祝い膳用の料理・会場使用料・記念写真代などが全て含まれています。
結納の流れ(仲人がいない略式結納)
結納の流れも仲人がいる略式結納とほぼ同じで、違いは仲人がやる仕事を進行役が務める事の他2、3点です。まずは床の間またはそれに準じた上座に両家の結納品を置きます。置き方は向かって右側が男性側の結納品、左側が女性側の結納品です。
それから一同着席後、男性の父親が挨拶を述べてから、男性が結納品を男性の父親に渡します。男性の母親または男性本人が、その結納品を収めている台を女性の前に置き一礼してから下がります。女性・父親・母親の順に目録に目を通し、女性の母親が受書を女性に渡したら、男性本人の前へ行き受書を手渡します。
男性側が受書を確認したら、次は女性の母親が男性の前に結納品を置き礼をして席に下がり、女性の父親が礼を述べます。男性側が目録を確認したら受書を女性側に渡して、男性本人が口上を述べます。その後は婚約指輪や記念品を両家にお披露目して、男性の父親が結びの口上を述べたて結納をお開きにし、その後祝宴を開きます。
顔合わせの食事会
結納形式には則らずに、両家の顔合わせとして食事会を行う人達も少なくありません。しかし、単なるお互いの両親を交えた食事というわけではなく、結納の意味が込められているので、砕けすぎずきちんとした形にする事が大事です。
場所(顔合わせの食事会)
料亭やホテル・レストランなど、ある程度格式のある場所で行いましょう。中でも個室が利用できる、大皿から取り分ける必要の無い個人用のコースがある、リラックスしやすい、従業員が結納を兼ねた食事会の段取りを良く知っている、などの点から料亭で食事会を行う人が多いです。
食事会の流れ(顔合わせの食事会)
一同が着席したら、男性の父親が挨拶を述べます。本人達による両親の紹介を行った後、婚約記念品をお披露目します。記念写真を撮った後に乾杯をして食事を開始します。食事会をお開きにする際には、男性の父親または本人達が締めの挨拶を述べます。
その他の注意点(顔合わせの食事会)
記念写真は締めの挨拶の前に行っても良いのですが、アルコール分が入ると顔が赤くなったりして、参加者全員の満足のいく写真が取れない場合があります。ですから、食事の前の記念写真をお勧めします。また本人達の両親が始めて顔合わせする場合には、本人達が話題を提供したり雰囲気を作り上げていく必要があります。
まとめ
一見難しそうですが、仲人や知識のある親戚に教示してもらうと、気負わず結納を収める事が出来るのではないでしょうか。
また両家でよく話し合い、双方納得のいく思い出深い結納の形にしたいものです。