厚生労働省の調査によれば、総離婚件数は2000年がこれまでで一番多く11万7000件以上ありました。現在は29歳以下の若年離婚が最大事よりも10%ほど減少しているのに対し、熟年離婚の場合は2000年を境にじわじわ増え続け、2010年では若年離婚率が21%弱で熟年離婚が17%と、あまり変わらなくなってきています。
2000年の離婚件数最大時には若年離婚数が熟年離婚数の倍あった事を考えると、この急激な熟年離婚数の増加には驚きを隠せませんね。熟年離婚に至る理由は様々で長期に渡る出来事の積み重ねもプラスされるので、簡単に解決する類のものではありません。
しかし老後を二人で楽しく暮らしていきたいと思っているのならば、その時でなく今から対策・努力する必要があります。ここに熟年離婚の主な理由を挙げましたので、自分の言動と照らし合わせて対策を立てましょう。
価値観の違いからの熟年離婚
人間誰もがまったく同じ価値観を持つ事はありえませんね。そこが人間の面白い所なのかもしれませんが、2人が結婚して家族生活を営んでいくためには、価値観の擦り合わせが必要になってきます。例えばお金の使い方や子供の育て方・教育などの大事なポイントに関しては、よく話し合って何が一番よい方法かを確立しなければなりません。
しかし、どちらかが自分の価値観を家族に押し付けてルールを作ってしまえば、片方は我慢せざるをえません。それが日常的に繰り返されるようになると、もうこれ以上続けられないと離婚を決意するようになります。
主人在宅によるストレスからの熟年離婚
熟年離婚を決めた人の中には、夫の定年後しばらくしてから急に離婚を申し込む妻というケースも少なくありません。誰もが、家庭の中で一人一人の生活パターンというものがありますが、夫の定年によって妻の生活パターンが崩れてしまいます。
これまで家事・仕事・息抜きの時間という風に自分で作っていたのに、毎日家にいる夫はそれが分からずにあれこれ指図する、または家事を手伝ってくれてもきちんと出来ていないのでイライラする、などが積み重なってストレスとなり、中には胃潰瘍・喘息・アトピーなどの症状を引き起こす場合もあります。
この状態が続くとストレスからくる不調や夫の理解のなさから、離婚を考え実行するようになります。
浪費・借金からの熟年離婚
今の時代、万が一のためにお金をセーブしておくのは当たり前になっています。しかしその事を考えずに、どんどん散財するようでは、妻もこの生活は続けていけないと考え始めるでしょう。またパチンコ・競馬などのギャンブルも気分転換のためならば何も問題ありませんが、のめり込んで生活費を使い果たし仕舞いにはローンをしてまでギャンブルを続けるほどになると、これからの事を考えて夫とはやっていけないと考えるようになります。
親の介護からの熟年離婚
熟年夫婦にあたる年齢は50代・60代で、そうすると実父母や義父母の年齢は大体70代以降の方がほとんどですね。このくらいの年代で、一番問題になってくるのが介護問題です。今は介護をする必要が出てきても、前々から申し込んでいないと、介護施設や介護サービスを受けるのが難しくなっています。
そして全部ダメだった時に介護は妻の役割となって、肉体的・精神的に大きな負担を抱えてしまいます。けれども夫の中には妻の介護にまったく関与しなかったり、さらにあれこれ指図する、してもらって当然と考える、など昔の意識のままの人がいます。実父母の介護を、嫁に丸投げするような夫に不安を感じて離婚を申し込む妻も多いです。
嫁姑関係からの熟年離婚
いつの時代も嫁と姑の関係がよくないのが原因で、様々な問題が起きます。嫁と姑が対立した時に、夫は「嫁は嫁いだ先のやり方に従うべし」という自分の母親である姑の立場に立って、妻の言動に口を挟みがちになります。
自分を庇ってくれるでもなく反対に糾弾されるようでは、妻は夫に対して不満を抱くようになるのは仕方がありませんね。舅姑が介護必要な年齢になれば、このようなタイプの夫は妻に介護をさせるのは当たり前と思っている節があります。それを避けるために離婚を切り出す妻もいます。
性格の違いからの熟年離婚
性格が一致しないのは人間にとって当たり前のことですが、結婚した後で家族生活を続けているうちに相手の欠点には目をつぶったり、お互い意識して直していくようにするのが、上手く夫婦でやっていける秘訣の一つです。しかし、長い間目をつぶって我慢していた相手の嫌な部分がある日突然我慢しきれなくなった、ずっと直すよう言っていたが聞き入れてくれなかったなど、長い間我慢していたものが何かをきっかけに我慢できなくなり、離婚へと繋がる場合があります。
モラルハラスメントからの熟年離婚
人の心を傷つける精神的または肉体的暴力の事をモラルハラスメントと言い、DVやセクハラ・パワハラなどが含まれます。妻のする事なす事に対して酷い言葉で文句をつけたり、夫に逆らえないよう精神的に追い詰める、妻の自尊心を潰すなどがあり、妻は我慢を強いられ、次第にうつ病など精神に不調をきたすようになります。
今まで夫にモラルハラスメントを受けても、会社に行ってしまえば終わりと耐えられた以前と違い、定年後はずっと家にいるわけですから到底耐えられなくなりますね。
相手の浮気からの熟年離婚
恋はその人を若返らせる、なんて言いますがそれは双方とも独身の場合だけです。浮気や不倫は本人達にしてみれば大した事じゃないと思っていても、その影響は計り知れず家庭を壊してしまう可能性が大変高いです。
若い時は仕事に励んで浮気の気配などまったくなかった人でも、定年後に様々な趣味やスポーツを始めるようになり、そこから浮気や不倫がスタートするといった事も珍しくありません。また、若い頃に浮気をして再構築をした夫婦でも、やはり許せずに定年後に離婚を突きつける人もいます。
子供の自立からの熟年離婚
離婚したいと考えていても様々な要因があって踏みとどまる妻も少なくありませんが、子供がいる場合その中で子供が1,2を争う大きな要因と考えてよいでしょう。
生活費の心配がなかったとしても、母親が父親役も兼ねるのは大変、父親が必要な場面もある、子供には両親が揃っていた方がいい、など子供の精神的な支えを失ったら、と考え自分が我慢すればいいと思っている妻も多いです。
しかし彼女達の大部分は子供が成人・就職して自立すれば子供への配慮は要らなくなるので、子供の自立とともに自分も第二の人生を送ろう、と決めています。
依存症からの熟年離婚依存症
依存症が原因で熟年離婚する夫婦も多いです。依存症の中で特に多いのがアルコール依存症です。
依存症になると、他の依存症も付随して発症したり家庭内暴力・借金・浮気と段々エスカレートしてくるので、配偶者だけでなく家族や近所にまで影響が及ぶ事もあります。今まで我慢していてももう無理と考えてしまえば、後は離婚へ進むのみです。
年金分割制度による熟年離婚
日本国民が納める年金には3種類あるのをご存知ですか?成人した国民全員が払う基礎年金、それからサラリーマンの厚生年金と公務員・私立学校職員の共済年金、さらに各民間企業が設けている企業年金などです。
今まではその内の厚生年金と共済年金については、離婚の際に掛けた本人にすべて受給する事になっていました。しかし2007年4月から施行されている新しい年金分割制度では、条件が整えば夫が掛けていた厚生年金・共済年金を、妻が最高二分の一受け取れるようになっています。
これで離婚後の経済負担が軽減されると、今まで金銭面で離婚をためらっていた人の大きなきっかけとなって、熟年離婚へと結びつきます。
最後に
夫婦は何も言わなくても通じ合える、などと思い込んでいた結果が熟年離婚へと繋がる陰の大きな原因となっているのが分かりますね。
定年後に取り返しが付かない事になる前に、常日頃から二人でよく話し合い、これらの原因を予防していくようにしたいものです。